コラム
翻訳の3つの分野と特徴について
皆さんは翻訳には大きく分けて3つの分野があることをご存じでしょうか。
日常生活においては、本や雑誌の【出版翻訳】や、海外映画・ドラマの字幕・吹き替えの【映像翻訳】を目にすることが多いと思います。まずはこの2つの分野について見ていきましょう。
【出版翻訳】
海外の出版物を日本語に翻訳、または、日本の出版物を別の言語に翻訳することです。翻訳の対象となる出版物は多岐にわたりますが、ジャンルは大きく分けて、純文学、ミステリ、SF、ファンタジー、ロマンス、ノベライズ作品といったいわゆる小説の「フィクション」とビジネス関連書籍から自伝、評伝、実用書、芸術系などの「ノンフィクション」の2つに分類されます。
高い語学力だけではなく、原作のテーマや文章のニュアンス、伝えたいことなどを正しく理解し読みやすく表現することが必要で、出版物として面白いと思わせる内容に仕上げることも求められます。
【映像翻訳】
海外映画・ドラマの字幕・吹き替えのようなエンターテインメント関連のイメージを持たれている方が多いと思いますが、企業活動のグローバル化とIT技術の発達による情報発信の多様化に伴い、ビジネスの場では企業や商品のプロモーション動画、イベント・セミナー動画など、映像翻訳が必要とされる機会が増えています。また、個人でもYouTubeやTikTokなどの動画共有サイト・アプリから動画の投稿が容易となり、今は動画の時代といわれるほど、あふれんばかりの動画が次々と作り出されています。今、翻訳市場で急速に需要が増えているのも映像翻訳の分野になります。
映像翻訳のジャンルは大きく分けて、「字幕」「吹き替え」「ボイスオーバー」の3つに分類されます。
・字幕翻訳
字幕翻訳は、映像内の音声や情報を別の言語に翻訳して、音声に合わせて表示する翻訳です。画面上に表示される文字を短時間で読むには限界があるため、できるだけ簡潔に伝えることが重要です。
・吹き替え翻訳
吹き替え翻訳とは、オリジナル映像の音声を、翻訳した別の言語に差し替える手法です。翻訳作業に加えて、音声収録で使う台本の制作も行います。例として、海外のアニメやドラマの吹き替え翻訳が挙げられます。
字幕翻訳のような文字数の制限はありませんが、オリジナル映像の音声に合った秒数や、口の動きに合わせた言葉選びを行うことが大切です。
・ボイスオーバー
ボイスオーバーは、オリジナル映像の音声を小音量で流しながら、翻訳した言語の音声を被せて流す手法です。一般的には、ニュースやドキュメンタリーなどのインタビュー・ナレーションで使用されます。
文字数の制限がなく、口の動きに合わせる必要もないため、より多くの情報を伝えられます。また、オリジナル音声が残るため、言葉の抑揚や表現をそのまま伝えられる点も特徴です。
当社では映像翻訳のご依頼を承っておりますのでお気軽にお問い合わせください。
ここまで【出版翻訳】と【映像翻訳】の分野の特徴について解説しましたが、翻訳市場のなかでこれら2つの分野が占める割合をご存じでしょうか。
翻訳市場はおおよそ2,500億円規模といわれていますが、実は【出版翻訳】と【映像翻訳】は合わせても1割程度にしかならないのです。日常生活において、皆さんが目にすることが多い、この2つの分野が翻訳市場では決して大きな存在ではないと聞くと少し驚きですね。
では、翻訳市場の残りの9割はどんな分野になるのでしょうか。
それは非常に幅広く、多岐にわたるのですが、皆さんにはあまり馴染みがない【産業翻訳】という分野が翻訳市場の最大の需要を占めています。
そして、当然ながら翻訳業界で働く翻訳者、翻訳会社の人の大半はこの分野で仕事をしています。
では、【産業翻訳】とは一体何でしょうか。
【産業翻訳】
企業の活動を通じて発生する文書の翻訳です。社内向けや一般向けの文書はもちろんのこと、企業間の契約書、製品マニュアル、仕様書、マーケットレポートなど、文書の種類、分野は様々です。日本ではまだまだ日本語から英語への翻訳の需要が大半ですが、企業活動のグローバル化に伴い、新興国の言語への翻訳需要も高まりつつあります。多くの日本企業が進出している中国や東南アジア、中東では、企業間の契約書や法律文書、製品マニュアルや仕様書に至るまで、様々な文書の翻訳が必要とされています。
また近年では海外企業が日本に進出するケースも増えており、英語や中国語を日本語へ翻訳する需要も高まりつつあります。
<産業翻訳の分野>
・マニュアル・取扱説明書
・法務・契約書
・環境・エネルギー
・建設・設計・土木
・学術論文
・IT ハード・ソフトウェア
・広告・宣伝・WEB
・観光・インバウンド
・科学
・医学・薬学
・特許・知的財産
・財務・IR
産業翻訳のそれぞれの分野の内容は専門性が高く、翻訳者には高い語学力だけではなく、翻訳する分野の専門知識が求められる場合が多くあります。
今回の記事では翻訳の3つの分野と特徴について解説しましたが、いかがだったでしょうか。
当社では、1967年の創業以来、数多くの「産業翻訳」の分野に関わる翻訳を手掛けてきました。また翻訳だけでなく、 レイアウト調整(翻訳文の体裁を整える作業)、DTP、印刷・製本などご要望に応じて対応いたします。
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